AIとキャリア:チャンスは今の仕事の中にある
Jay Vergara 9分で読める
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AIとキャリアについて、いま出回っているアドバイスの多くは、人を2つのグループのどちらかに追い込んでいます。ひとつめのグループは、YouTubeで「会社を辞めてAI自動化エージェンシーを立ち上げよう」と言われている人たち。ふたつめは、自分の分野ではベテランなのに、あと18か月もすればAIのせいで自分は必要とされなくなると思い込んで、身動きが取れなくなっている人たちです。私は、どちらのグループもデータを少し読み違えていると思っています。人事、人材開発(L&D)、コンサルティング、財務などの仕事をしている人なら、なおさらです。
元になった動画はYouTubeにあります。この記事はその文章版です。

きっかけは、Nate Herkさんの動画への返信でした。2026年のAIキャリアのチャンスについての動画で、私は8割くらいは正しいと思っています。ただ、彼が触れなかった残りの2割こそ、人に関わる仕事をしている人にとっていちばん大事な部分です。この記事ではそこを掘り下げます。
IBMのデータが示す、AIとキャリアの関係
5月、IBM Institute for Business Valueが「2026年CEO調査」を発表しました。2026年2月から4月にかけて、33の国・地域のCEOや経営幹部2,000人を対象に行われた調査です。その中で、私が気になった結果が2つあります。
1つめは、最高AI責任者(CAIO)です。
1年ほどで、最高AI責任者を置く組織の割合が50ポイントも増えたことになります。
2つめはスキルについてです。CEOの86%は、自社の社員がAIと協働するスキルを持っていると考えています。ところが同じCEOたちが、日常業務でAIを定期的に使っている社員は25%にすぎないと答えています。
経営層の想定と現場の実態の間に61ポイントの差があるわけで、これがこの先数年の構造的な事実になると私は考えています。多くの職場では「AIに仕事を奪われる」という不安が語られています。でも私がこのデータから読み取るのは、経営層はスキルがもうあると思い込んでいて、実際にはほとんどの人がまだ本格的に使い始めていない、という状況です。遅かれ早かれ、企業は誰が本当にそのスキルを持っているのかを知ることになります。
エージェンシー起業が見た目より難しい理由
エージェンシーの立ち上げがYouTubeで語られているほど簡単ではない、という点はNateさんの言うとおりです。市場の飽和もその一因ですが、もっと大きな理由は、企業が外部のAIベンダーからの売り込みをこれ以上必要としていないことだと思います。企業に必要なのは、AIを理解していて、実際の仕事で使いこなせる社内の人材です。
最高AI責任者が増えている流れも、私はそう捉えています。外部の会社を新たに雇うというより、すでに社内にある機能を組み替える動きです。同じIBMの調査では、回答者の85%が「すべての部門のリーダーは、自分の領域でテクノロジーの専門家にならなければならない」と答えています。つまり企業は、いま雇っている人たちに、今の仕事の中でAIを使いこなせるようになってほしいと考えているわけです。
チャンスは、あなたが今働いている職場の中にあります。

業務をひとつ作り直して、うまくいかなかったことを書き残す
では、具体的に何をすればいいのか。華やかな話ではありません。今の仕事の中から、業務をひとつだけ選んでください。繰り返し発生していて、やる前とやった後の違いがはっきりわかるもの。新しいやり方のほうが良いかどうか、すぐに判断できるような作業が向いています。
次に、手元にあるAIツールでその業務を作り直します。私はこのチャンネルでClaude(Anthropic社のAIアシスタント)の話をよくしますが、ChatGPTでもMicrosoft Copilotでも、使えるものを使ってください。少し自分の得意分野から外れたツールでもかまいません。むしろそのほうがいいくらいです。
そして、うまくいかなかったことを書き出します。
- 業務をひとつ選ぶ 今の仕事の中で繰り返し発生していて、やる前とやった後の違いがはっきりわかるもの。
- AIで作り直す Claude、ChatGPT、Microsoft Copilotなど、手元にあるツールを使います。
- うまくいかなかったことを書き出す 何が失敗し、何がうまくいき、途中で何を設計し直したか。
この最後のステップが差になります。これから先、誰もが「AIを使っています」「AIに詳しいです」と言うようになります。AIについてのYouTubeチャンネルをやっている私自身も、ある意味そう言っている側です。でも、何が失敗したのか、何がうまくいって何がうまくいかなかったのか、途中で何を設計し直したのかを語れる人はずっと少ない。それが本当の意味でのAIの使いこなし(AIフルエンシー)であり、採用する側が見始めているのもまさにそこです。
いま企業が求めるAIスキル
求人票はすでに変わり始めています。財務の分野では、Datarailsが米国の求人5,000件以上を分析し、2026年1月時点で31%がAIや機械学習に触れていたと報告しています。1年前は25%でした(動画ではもっと大まかな数字を挙げましたが、こちらが出典のある数字です)。
書き方も変わってきています。「Excelが使えること」といった表現が、「AIのアウトプットを検証できること」「AIツールを業務フローに組み込めること」といった表現に置き換わりつつあります。これが新しい語彙で、この変化に早く気づいた人が面接に呼ばれ、選ばれる側に入っていきます。今週、自分の分野の求人をいくつか見て、こうした表現がどれくらい出てくるか数えてみてください。
先ほどの「業務ひとつの作り直し」は、この言葉にそのまま当てはまります。AIが出したものを自分で確認し、実際の業務フローにツールを組み込み、うまくいかなかったときに何が起きたかを説明できるからです。
人材開発の仕事での、私自身のAI環境
これが机上の空論ではないことを示したいので、私自身の例を紹介します。私は人材開発の仕事を10年以上続けていて(はっきり数えてはいませんが)、それに加えてコンサルティングの仕事もしてきました。今はMBAにも取り組んでいます。
この半年で、私はClaude Cowork(Claudeがパソコン上のファイルやツールを操作しながら作業できる、Anthropic社のデスクトップアプリ)でいくつかのワークフローを作りました。NotionのライブラリやGoogleカレンダー、研究論文の検索エンジンであるConsensus、WebスクレイピングツールのApifyとつながっています。これらはすべてMCP(Model Context Protocol、外部ツールをAIアシスタントにつなぐための共通の仕組み)でつながっていて、セットアップにコードは一行も書いていません。

とはいえ、大事なのはツールの組み合わせではなく、このリストにあるものがどれも人材開発や人事、マーケティングの人にも手の届くものだ、ということです。ツールはもうそこにあって、実際の仕事で使い始めた瞬間から、スキルは積み上がっていきます。
これからの18か月が大事な理由
私には、これからの10年のキャリアは、この先18か月ほどで決まるのではないかという仮説があります。先を行くのは業界を移る人ではなく、ひとつの分野を深く掘り下げ、その中でAIを本当に使いこなせるようになった人だと思っています。
周りがエージェンシーの夢を追いかけたり、テクノロジーから目をそらしたりしている間に、あなたの会社の最高AI責任者は、たぶん外から採用されることはありません。私の予想では、すでに社内にいて、ある機能をよく理解し、AIを使いこなせるようになった人がその役割に就きます。それがあなたかもしれません。
私が人材開発と人事の視点を加えたのは、それが私の仕事の領域だからです。でも、人材開発や人事である必要はありません。今どの部門にいても、自分の専門分野の経験と本物のAIの使いこなしを組み合わせれば、良い位置に立てます。
あなたなら、どの業務から作り直しますか。動画のコメント欄か、LinkedInで教えてください。
ほかの動画もYouTubeで公開しています(英語)。
YouTubeでチャンネル登録出典
Jay Vergara(ジェイ・ベルガラ)は東京在住。AIでものを作り、学んだことをleadhuman.ai、YouTube、LinkedInで発信しています。キャリアの大半は人材開発(L&D)と研修の分野です。
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